第一話・リゾバ~出発前夜

ここ半年ほど、リゾバをやりたいとずっと思っていた。だが、どういう星のめぐりあわせか分からないが、たまたまリゾバの職にありつけずにいた。

リゾバ専門の派遣会社にいくつか登録してみたものの、仕事の紹介が無かったのだ。私は今回ばかりはかなり焦ってしまった。というのも、私は年齢が30歳を超え、もうすぐ、31歳になろうとしている。そして、これまで、ひとつの職業を継続するということはなく、気分きままに職を転々としてきた。
こんなであるから、やっぱり、転職活動というものが20代前半のときのようにはいかないのかなあと感じてしまうのだ。とくに、仕事が決まらないときはそうである。

リゾバの派遣会社に登録して半年過ぎ、仕事の紹介の電話もなかったので、こんどはこちらの希望条件を下げることにしてみた。というのも、それまでは「相部屋は絶対にイヤだ」と言っていたのを、「仕事があるなら相部屋でも構わない」という条件に変えたのである。

2、3社、それであたってみたら、1社だけ、仕事の紹介をしてくれるところがあらわれた。それはS社であった。「相部屋でも構わない」という私の言葉が少しは功を奏したのだろうか。なんであれ、有難いことである。ちなみに、その会社のほかは、相部屋の仕事でさえ未経験の私には紹介するわけにはいかないという返事であった。

S社が紹介してくれたのは、栃木県の湯西川温泉にあるホテルであった。仕事の内容はホテルの総務である。総務を雇うくらいのホテルであるから、収容人数も多いのであろうと予想された。
総務の仕事は初めてであったが、以前に事務の仕事はやったことがある。だから、この仕事だったら、なんとなくこなせそうな気がした。

3日ほど過ぎて、S社から内定の電話をもらった。そのときくらい嬉しかったことはない。正直、崖っぷちに立たされていたような気がしたのだ。雇用情勢は逼迫しており、昔のように、「日本で金を稼いで、物価の安い国に行って遊んで暮らす」というライフスタイルが、通用しなくなってきているような気がするのだ。失業状態が続いてしまうと、バイトでさえ採用されにくい状態になってしまう。だから焦ったのだ。私は、その湯西川温泉の仕事は、おそらく受かるんじゃないかという手ごたえは感じていたけれども、不安だったために、某求人サイトで募集していた直接雇用のリゾートバイトのほうにも履歴書を送っていた。履歴書を四通も書くというのは大変な作業であった。指が腱鞘炎になるんじゃないかと思ったくらいだ。ヒーヒー言いながら書き終わり、ポストに投函した。結局、湯西川温泉のリゾバに受かったので、その作業は無駄になってしまったのだけれど、それでも、「人事を尽くして天命を待つ」という言葉もある。流されて生きるのが本分であるが、それでも、やるだけのことはやらねばなるまいと思ったのだ。

そんなわけで、リゾバもきまって、私は荷造りに忙しかった。荷造りを終えるのに二日もかかってしまった。今回は総務の仕事であるから、リゾバとはいえ、スーツを持参でいくことを指示された。スーツやネクタイは懐かしい。かれこれ、ここ2年ほど、スーツにまともに袖を通した覚えが無い。まことに久しぶりのオフィスワークという感じである。

さて、この記事をウェブにアップするのは、おそらく、半年、あるいは1年後である。リゾバでの私の働きぶり、あるいは職場の観察などを、覚え書き風に綴っていくつもりではある。だが、リアルタイムにバンバン!と投稿するのはちょっと差し控えたい。

そのため、リゾバの最新情報としては鮮度が古くなっていくのは否めない。だが、なるべく、リゾバの生々しい情景、仕事の風景、悲喜こもごもなどを書けたらいいと考えている。それが、誰の役に立つかどうなのか皆目検討もつかないのだが、それでも私は書き続けるつもりである。